「やめろよ」
「…え?」



ずっと一緒にって、そんな簡単に口に出して。
ああ、知ってるさお前にとっては軽い気持ちじゃないってこと。
だけど。






「『日番谷くんは』ってそんなに俺のこと信じてるわけ?俺は、お前が可愛がってた『シロちゃん』じゃねえよ。 もう。お前と一緒にいてどうなる。あ?酷くなんかねえさ。お前の方がよっぽどじゃねえ?勝手に近づいてきて俺を変えて。 そのくせ突き放したのは誰だ」

「そんな…」

「わかんねえよ?俺だって、お前を裏切るかもしれない。他に大切な奴ができたら、お前なんか護らねえかもな。 お前はそれでも、俺と居たいわけ?違うだろ」

嘘ばっかりだった。何があっても裏切るつもりなんか無い、他に大切な奴なんてできそうにないのに。 酷いことを言ったのはわかっていた。それでも、言葉を撤回するつもりはない。

「誰も、お前がこんな性格だなんて思わねえよな。今の俺はお前しかいなくて、お前だけ見てるから。 安心できるから。だから傍に置くんだろ?お前のことわかってやれんのは、俺だけだしな」

どうすればいいの、と震える彼女の口が呟いた。そう、それでいい。へらへら笑ったりせず、ただありのままで。 醜い感情をむき出しにして、頼めばいい。



「俺が必要だって、一言。それだけ言えば、俺は一生傍にいてやる。ついてこいって言われたら、何処までも追いかけてく。 頼まれなくてももいつだって護ってやるから、自分の身なんか省みずに。お前は、そういう相手が欲しいんだろ?」



彼女は酷く脆い。信じていた人に裏切られるなんて耐えられない。だから、



酸素を求めたのか、それとも返す言葉が見つからなかったのか。目を大きく開けたまま、雛森は口を開閉させた。 歪められた漆黒の瞳は潤んで、今にも涙が零れ落ちそうだった。



「…お願い、傍に、いて。遠くに、行かないで。あたしを、置いていかないで…」



暫くの沈黙の後の、彼女の言葉。

彼女の顔は涙でぐちゃぐちゃで、自分勝手な感傷で泣く小さな子供のようだった。 他の人間がやっていたら鬱陶しくて見ていられないかもしれないが、雛森は別だ(ずっと、昔から、)どうしようもなく、愛おしい。 この涙は、彼女が人のために流しているものじゃない。彼女が自分のためだけにこぼしている涙。


ただ、求められたかった。どんな関係でもいい。利用されるだけでも、都合のいい存在でも。 必要だと思って欲しかった。会話の中にさり気無く混ぜられるような他愛無い言葉だけじゃなくて、もっと、強く。 ただの独占欲でも執着心でもいいじゃないか。必要とされるのなら。

手を、差し伸べる。おそるおそる触れられた華奢な手を握りしめ、しゃがみこんでいる彼女と視線を合わせた。


「       」


たった一言で、彼女の泣き顔が微笑みに変わった。ぼろぼろと涙を流す彼女も綺麗だったので少し残念だった。 だけど目尻が下がった情けない笑顔もそれなりに気に入ったので、まあいいかと思いなおす。

振り回されてもいい、都合よく使われても、あっさり捨てられるのだとしても。 俺をそうしたのは、弱く変えたのは、雛森だ。こいつに必要とされなくなったら、俺はどうすればいい。

死覇装を握る手を離そうとはしない。それは幼馴染みへの独占欲、自分のものだという執着心、それからほんの少しの恋情。 この手は確かに自分を必要としている。

幸せなんて、これでだけでいいじゃないか。










しあわせというのはそんなもので

(利用されている、それの何処が悪い。受け入れたのは自分だ)












お題完成ー!頑張ったなあ自分(笑)

ええと、中途半端に一緒にいるのは嫌で、利用されるのでも何でもいいから強く必要にされたい日番谷くん。
裏切られるのが怖くて笑いながら必死で「ずっと一緒にいてね」っていう雛森。…日番谷が黒い。
あ、愛はあるんですよ愛は!日→←雛ですはい!