「日番谷くんは悪くないよ。あたしが弱かっただけなんだよ、今も、昔も」


護られてばかりだという台詞は何度も聞いたものだったが、それを言う雛森の顔はいつものように笑ってはいなかった。 泣きたそうに顔をゆがめるのはきっと自分が赦せないから。そんな顔見たくなくて、卑怯だとは思ったけれど俯いてしまった。


別に気にしてなどいないのに。胸につけられた傷は癒えたが、きっと痕は消えない。雛森の涙も、貫かれた時の痛みと絶望も、疑われた悲しみも、全部残っている。だけど、彼女はまだ此処にいるのだから。ごめんなさい、ごめんなさい、と絶えず謝罪の言葉を口にする雛森の唇を、右手で塞いだ。小さな手のひらに、なにか温かいものが伝わっておちる。顔を上げると、見開かれた大きな瞳から、涙が一筋流れ落ちるのが見えた。


「…泣けよ」



ふるふると弱弱しく、首を横に振る。雛森はそっと日番谷の手をはがして、呟くように言った。



「日番谷くんのほうが、ずっとずっと、辛いんだから。一緒に、泣こうよ」





今この瞬間彼女が流す涙は、他の誰でもない、自分のためのもの。それがどうしようもなく切なくて、 泣かせたくないと思っているのに嬉しくて、自分も泣きたくなった。ひつがやくんも、という小さな声が聞こえ、ぎゅっと抱きしめられた。子供のときのことを思い出させる抱擁に、胸が痛くなる。

この腕の中の熱のためならば、いくらでも傷ついてもいい、と本気で思った。ずっとずっと、護り続けてきたもの。失わないために何かできることがあるなら、躊躇う必要はない。




二人で抱きしめあって、ひたすら泣き続けた。




高い体温が、震えた腕が。 まだ此処にあるのだと教えてくれた。それだけで、





救ったのだと君は知らない

(一方的だったわけではないと、伝えたかった)



























お久しぶりの。一護たちが藍染とこでいろいろやってるあたり。
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